akane
2018/06/29
akane
2018/06/29
Genre: Electronic Pop, Synthpop
Trans Europa Express – Kraftwerk (1977) Kling Klang, Germany
(RS 256 / NME 81) 245 + 420 = 665
Tracks:
Tracks:M1: Europe Endless (Europa Endlos), M2: The Hall of Mirrors (Spiegelsaal), M3: Showroom Dummies (Schaufensterpuppen), M4: Trans-Europe Express (Trans Europa Express), M5: Metal on Metal (Metall auf Metall), M6: Abzug, M7: Franz Schubert, M8: Endless Endless (Endlos Endlos)
とにもかくにも、ありとあらゆる国と地域のポップ音楽家に絶大なる影響を与えたスーパー・バンドがドイツ(当時は西ドイツ)出身の彼ら、クラフトワークだ。複数のシンセサイザーを主要楽器として使用したのも、リズム・マシーンを多用したのも、ことそれが「新種のポップ音楽として成立していた」という点で見たならば、ずっと一貫して人類の先頭に立っていたのが、彼らだった。
たとえば日本的に言うと、YMOはもちろん、そのほかすべての「テクノポップ」バンドの始祖となったのが彼らだ。地球上のあらゆるエレクトロニック・ポップのゴッドファーザーがクラフトワークだ、と言い換えてもいい。
そんな彼らの6枚目のスタジオ・アルバムにして、代表作のひとつに数えられるのが本作だ。前々作『アウトバーン』(74年)は、ヨーロッパはもとよりアメリカでも大いに注目された。これは画期的なことで、なぜならそれまでの常識では、電子楽器が主体となっている音楽は、現代音楽や実験音楽のような「前衛的」なものばかりだと考えられていたからだ。しかし同作のタイトル・チューンは(アルバム・ヴァージョンの22分超を3分に編集したものが)ビルボードのホット100にランクインする(最高位は25位)という快挙を成し遂げる。この延長線上にあるポイントに向けて進行させていったのが本作だ。
たとえばM5、邦題を「ヨーロッパ急行」(ちなみにアルバムの邦題もこれだった)はアフリカ・バンバータに無許可でサンプリングされることになる。ヒップホップの原型を作った3大DJのひとりである彼が、「ヨーロッパ急行」を使って制作したのが「プラネット・ロック」(82年)で、その大胆なアイデア、「新鮮な」ビートは、黎明期のヒップホップ・シーンに巨大な足跡を残した。そして「クラフトワークの音楽はファンキーなのだ」ということを、世界じゅうがあらためて認識した。だから本作が「ポップ」の付かないダンス音楽のテクノに与えた影響も、甚大だ。
間違いかもしれないが、ひそかに僕は、小池一夫の原作、叶精作が作画の漫画『実験人形ダミー・オスカー』(77年より連載開始)すら、クラフトワークの影響下にあるとにらんでいる。M3「ショールーム・ダミー」を初めて聴いた瞬間にそう直観した、のだが……どうなのだろうか?
※凡例:
●タイトル表記は、アルバム名、アーティスト名の順。和文の括弧内は、オリジナル盤の発表年、レーベル名、レーベルの所在国を記している。
●アルバムや曲名については、英文の片仮名起こしを原則とする。とくによく知られている邦題がある場合は、本文中ではそれを優先的に記載する。
●「Genre」欄には、収録曲の傾向に近しいサブジャンル名を列記した。
●スコア欄について。「RS」=〈ローリング・ストーン〉のリストでの順位、「NME」は〈NME〉のリストでの順位。そこから計算されたスコアが「pt」であらわされている。
●収録曲一覧は、特記なき場合はすべて、原則的にオリジナル盤の曲目を記載している。
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