『Disruptor 金融の破壊者』著者新刊エッセイ 江上剛
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BW_machida

2021/10/15

コロナ禍で苦しむ人々のために

 

コロナ禍が世界を襲って二年近くになろうとしているが、未だに収まる気配がない。この間、私たちの生活は根本から見直しが迫られている。今までは人と人との出会いが生活の基本だったにも拘らず、人と出会い、親しく接触してはいけなくなったのだ。その戸惑いは今でも続いている。文章を書くという孤独な営みが生活の大部分を占めている作家の私でさえも、人と出会わなければ気迫もやる気も失われていく気がする。コロナに気を吸い取られていくのだ。

 

しかし本当に困っているのは、多くの中小企業だ。特に観光、宿泊、飲食などに携わる会社や人々は絶望的な状況にある。政府は、飲食業をコロナ拡大の元凶のように扱う。それまで彼らは「おもてなし」の前線に立ち、世界の人々を笑顔にしていたというのに。

 

政府が彼らの絶望を放置していたわけではない。特に実質無利子無担保融資(ゼロゼロ融資)は彼らを倒産から救った。これは利息も担保も不要で彼らにとって干天の慈雨というべきものだった。彼らは金融機関に殺到した。意外にもその融資は政府の低金利政策によって収益悪化に苦しんでいた金融機関を救うことになった。彼らが負担するべき利息を政府が肩代わりしてくれるお陰で、金融機関はノー・リスクで収益を上げられることになったからだ。金融機関は軒並み好決算となったのである。

 

現在、民間金融機関ではその制度融資が終了している。役目が終了したわけではない。彼らは、相変わらずコロナ禍で苦しみ続けている。彼らは、金融機関に支援を依頼するために足を運ぶだろう。しかし制度融資がないため民間金融機関は彼らの支援を拒むことになる。不良債権を増やしたくないからだ。その結果、彼らは累々と屍を晒すことになる。そんな悪夢のような未来を絶対に招いてはいけないとの願いを込めて『Disruptor 金融の破壊者』を上梓したのである。

 

『Disruptor 金融の破壊者』
江上剛/著

 

【あらすじ】
中学生が弱小地銀の支店に並ぶ人に聞いて「銀行が危ない」と、ツイートしただけで、取り付け騒ぎに。新型ウイルス感染症の蔓延で経済状況は悪化し、地銀発の銀行連鎖破綻を予測していた金融庁の局長は、調査のために部下を現地に送り込む。そこで目にしたのは?

 

江上剛(えがみ・ごう)1954年、兵庫県生まれ。2002年、銀行勤務の傍ら、『非情銀行』で作家デビュー。翌年、銀行を辞め、執筆に専念。著書に『蕎麦、食べていけ!』『庶務行員 多加賀主水の凍てつく夜』など。

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