お手軽から本格まで どんな「抹茶欲」にもこたえる決定版レシピ|福田淳子『抹茶のおやつ100』
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ryomiyagi

2022/12/26

 

開いたページから抹茶の香気が、甘い匂いが立ちのぼり、やたらにお腹がすいてしまう。鮮やかな抹茶色の表紙が印象的な本書は、抹茶のレシピだけを集めた、ちょっぴり贅沢な一冊。

 

メニュー表であるリストにはクッキーやマドレーヌ、スコーンなど定番の抹茶スイーツからホイップクリームに抹茶を混ぜこんだフルーツサンドやホットチョコレート、パンナコッタのほか、抹茶あんを包んだ大福など抹茶の魅力を存分に味わえるレシピが数多く並んでいる。抹茶の風味と色を最大限に活かしたレシピは、甘いもの好きに馴染みのあるものもあれば、ちょっと意外な組み合わせもある。ページをめくっているだけで十分楽しい気持ちになるのは、作者の抹茶愛が伝わってくるからだろう。

 

美味しい抹茶は色を見れば分かるという。鮮やかな緑色のものは美味しく、色がくすんでいるものは100%美味しくないらしい。苦みが弱くてうまみの強い「濃茶」は冷たいお菓子に、味わいが軽やかでしっかりとした苦みを感じられる「薄茶」は焼き菓子と相性が良いらしい。

 

抹茶は「ナマモノ」なので、取り扱いには注意が必要だ。どれほど高級で質の良い美味しい抹茶でも、保存状態が悪ければ品質は急激に落ちてしまう。使用する抹茶の量にも気をつけたい。抹茶の量が増えると味は濃くなるが、食感がパサつき、苦みのせいで全体の味のバランスが崩れてしまうこともあるからだ。小麦粉と吸水率がまったく違うため、生地に加えることで粘度が増したり、焦げやすくなったり、膨らみが悪くなることもある。そのうえ、抹茶は湿気や匂いを吸収しやすいから保管場所にも気をつけたい。

 

そう聞くと、抹茶を使ったおやつ作りはちょっと難しそう。しかし、無類の抹茶好きを公言する作者は、この本を手にとってくれた抹茶好きを決して見捨てたりはしない。本の巻末には、初心者はもちろん、ワンランク上の仕上がりを目指すお菓子作り経験者にも役立つ「お菓子作りの基本」がしっかり記されている。もちろん、抹茶のおやつ作り特有のコツもていねいに解説してくれているから心強い。

 

高級品のイメージがある抹茶だが、レシピに使用する量は意外にも少なめ。抹茶のことを大研究した結果をもとに、工夫を凝らして作られたというレシピは信頼度も高い。レシピに忠実に、優しくていねいに作業すれば、とびきり美味しい抹茶のおやつに出合えるはずだ。

 

 

『抹茶のおやつ100』
福田淳子/著

馬場紀衣(ばばいおり)

馬場紀衣(ばばいおり)

文筆家。ライター。東京都出身。4歳からバレエを習い始め、12歳で単身留学。国内外の大学で哲学、心理学、宗教学といった学問を横断し、帰国。現在は、本やアートを題材にしたコラムやレビューを執筆している。舞踊、演劇、すべての身体表現を愛するライターでもある。
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